汚部屋の遺伝子

家の中が汚くて気が狂う。

 

ずっと実家で過ごしていて、普段は何も感じていないのに、急にそんな気持ちに襲われることがある。

 

そのようになる場面は主に2つで、あちこちで探し物をしていて全く見つからない時と、几帳面な父親がゴミ溜め部分を見て嫌そうな唸り声をあげたり邪魔な物をその辺に投げ捨てたりするのをただ見てる時だ。

 

私の家は汚い。家が汚いと視界に余計なものが常にインプットされるので、脳に大事な情報が入らないし有益なアウトプットができない。だから汚い家に住む人間はどんどんバカになっていく。私も例外ではなくて、常に脳が散らかっている。出先だとそうでもないのに、家の中だと長時間勉強や作業ができない。

四六時中頭が混乱しているので何も考えず持ってる物を手放したり予想もつかないところに置いていたりする。必要な時には手元になくて必死に探すけれど、腐海と化した我が家で目当て物を見つけ出すのは、まさにヘドロの底の砂粒を見つけ出すことと同義。見つからぬ失せ物が気になって更に脳の空きスペースが狭まっていく。これを日々繰り返している。

 

 

前述の通り父は几帳面な性格で、自分のスペースは常に綺麗に保っている。

母は正反対で、片付けに関して致命的に苦手な人だ。家が汚い原因の7割は母。本当に物が捨てられない人で、片付けも亀スピードでしかこなせない。そんな母が管轄しているから、私が生まれてからずっと我が家は汚い。綺麗に片付いた部屋を見たことがない。一度引越しを経験しているがその前も後も汚さを維持、どころか向上させている。

 

 

狂っている。家族4人で座る食卓のうち、1人の席、というか私の席が物で埋まって2年ほど機能停止している。狂っている。調味料と器で溢れた台所はまな板を置くスペースがない。狂っている。リビングの四隅に立てない。物がうず高く積まれているから。

 

狂っている。リビングのエアコン修理を業者に頼むから、と四隅の有象無象が私の部屋へ全て押し込まれた。テストと資格勉強のために半日かけて掃除したばかりの私の部屋に。
業者が来る前に「勉強したいから勉強机の上にだけは物を置かないでくれ」と何度も懇願し、張り紙まで貼っておいた机の上に、洗濯カゴいっぱいと家庭用ごみ袋いっぱいの生活雑貨が積まれた。机の前も、教科書棚の前もいっぱいっぱい。いっぱいいっぱいいっぱいいっぱい

 

 

でも1番狂っているのは母の遺伝子を確実に受け継いだ私の存在かもしれない。
家が汚い原因の3割は私だ。使わない物や着こなせない服が山ほどあって、自分の部屋はすぐ汚くなる。前述のように気合を入れれば片づけることはまだ可能だが、その気合を入れることが相当難しい。

父と同じように、「汚い家は嫌だ」と日頃嘆いているのに、私は自分の部屋にて汚い家を構築するギフトの片鱗を発揮し始めている。将来の一人暮らしやマイホームが怖い。 

 

 

思えば母の実家がそうだった。母の母、私の祖母は同じように片付けられない人だったようで、物だらけの家に住んでいた。

生まれ育った環境で片付けの習慣が身につく、そう考えていた時期もあった。
でも違う。母と同じ家で幼少期を過ごした叔父と叔母の一人暮らしの家は綺麗だったし、私の兄は物を散らかさない。

何かの血。習慣なんてヌルいものじゃ避けられない血が受け継がれている。
私が子を持ったとして、必死に整理整頓した家で清く正しく育てたとしても、その子に汚部屋の血が流れていればスウィート・クリーン・マイホームは一瞬で汚泥へと変貌するのだ。
何なら幼児期のカラフルなおもちゃだけでリビングを足の踏み場もない(これはゴミ屋敷に住んでる人にしかわからないと思うんですけど、マジの方の"足の踏み場がない"のことを言っています)状態へと化すことができるかもしれない。祖母と母と私の血が凝縮された、‘‘汚部屋四世’’の子ならば、可能かもしれない。

 

 

私は一生汚部屋から解放されないのかもしれない。

二度と家族全員で食卓を囲めないのか?

キッチンで野菜を切ることは叶わないのか?

死ぬまで勉強机でノートを開くことはできないのか?

どうすればいい?

このままだと本当に狂ってしまう、

いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいの物々に埋もれながら。