償い

先日、雨が酷かったので雨合羽を着て自転車に乗った。

 

狭い路地を抜けたところで、脇から女性が歩いてきた。ちょうどその時、私の自転車の車輪が水たまりの上を通過することに気づく。咄嗟にハンドルを切り、可能な限り女性から遠のいて横を通過したが、もしかしたら雨水が女性の足にかかったかもしれない。

女性は紺のワンピースを着ていたので水がかかれば素足が濡れてしまうし、ワンピースにかかったとして紺色なら濡れた箇所が目立ってしまう。

 

最悪だ。女性も最悪と思っているだろう。申し訳ない。しかも本当に濡れたかどうか定かでなかったので、一声かけることもできなかった。申し訳ない。

 

心中燻ぶらせたまま広い道へ出た。そこは歩道と自転車道が隣り合っており、自転車道の真横に車道が敷かれている。

普通、自転車は自転車道を走るものだが、そこは交通量が多く煩雑しているため、ルールを無視し歩道を通行する自転車も多いのが現状だった。

 

その日も周囲を走っていた全ての自転車が歩道へ進んだ。私はこれ幸いとガラ空きの自転車道へ。

 

道路に溜まった雨量の多さと、前からやってくる自動車の勢いに気づいたときには、もう私の体左半分はびしょ濡れだった。

車のタイヤで撥ねた大量の水が、帯状のレーザービームのように一斉に私にふりかかったのだ。

 

車道と隣り合った自転車道にいたからこその悲劇。

 

あーーーー、だからみんな自転車道じゃなくて歩道に行ったの?みんな分かってたの?私だけバカだったのか、臨機応変>>>>>>>>>>交通ルール遵守ってことねみんな知能たけーーーーーーーすげーーーー

 

そんなことが短い間に頭を駆け巡り、もう一台車が通過し更に大量の水がかかった。ばっちり塗ったファンデーションもうまく上がったまつげも全部濡れた。おしまいの日。

 

 

でもこれは報いなのだと思う。女性に水をかけたかもしれない私に対する報い。女性にかかった分より多くの水をかぶることで、罪を清算したのだ。贖罪だったのだ。

 

それならば私は受け入れよう。もう会うことができない女性への後悔の念が薄れるなら、顔の左半分がすっぴん泥人形になるくらい造作もない。

 

 

 

…と思ったがやっぱりだめ。あの車どもやっぱむかつく、スピード落とさず走りやがって!申し訳ない顔一つせず!報いを受けろ!報いを受けろ!!償え!贖え!!

 

車から降りて屋内入るとき雨どいに伝うきったねー水が頭と背中に均等に流れ落ちろ!女性と私にかかった雨の合計量より多くの汚水を体で感じろ!同じ気持ちを味わえ!!